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第29話

 それぞれ少しずつ乗せた料理をレンジで温めて席に並べ、正和にお礼のメッセージを送りながら椅子に座る。  食器の僅かな音も気になるほど静かで少し寂しさを感じるが、彼が作ってくれたご飯はとても優しい味がした。  * * *    昼休み直前の古典の時間に行われた小テストの話で盛り上がりながら、いつものように四人で弁当を広げる。 「てか、修旅の自由行動どこ行く?」 「水族館行きたい! 水族館!!」  拓人の問いに勇樹が答え、それに笠原も続く。 「遠くないか? 沖縄と言ったら海だろ」 「えー、すーいーぞーくーかーんー! いくら暖かいって言っても海は寒いじゃん」  笠原と勇樹の言い合いが続く中、拓人は純にも話を振る。 「純は?」 「んー、国際通りかガラス村……? でもどこでもいいよ。拓人は行きたいとこないの?」 「漫湖のマングローブとか見てみたいとは思うけど」 「まっ……拓人、ひわーい」 「なんでだよ!」 「だって、ま、ま──」 「てか、それ地味じゃねえ?」  大袈裟に手で口元を覆った勇樹の言葉を流すように、笠原が会話に割り込んでくる。 「それを言ったら海なんてどこにでもあるだろ。水の中に生える木なんてなかなか見れないぞ」 「ばっか、お前、透明度が全然違うだろ」 「えー、でも、その……マングローブ? ってやつは、新しく近所にできた水族館にもあったよー」 「それって少し植わってるだけで本物の雰囲気とは違うし、それこそ水族館なんかどこにでもあるだろ」 「てか、拓人ってそういうの興味あったんだ」  話し合いが進むにつれて意見が分かれていく様子を傍観していた純も口を挟む。 「なにその、意外みたいな言い方……!」 「だって意外……。てか全部行けばよくない?」  純が首を傾げれば勇樹も首を傾げて口を開く。 「全部は無理じゃない?」 「いや、調べたらマングローブのとこはホテルから近いみたいだし、水族館の近くに綺麗なビーチがあるみたいだから回ろうと思えばいけると思う」  純の提案で再度それぞれの目的地を詳しく調べて移動などの所要時間を書き出してスケジュールを立てていく。  すると、ギリギリではあるが、なんとか全部回れそうだったので、午前中にマングローブ林を見て移動と昼食を済ませ、午後は水族館と海を回り、時間があれば帰りに国際通りに寄ることで話がまとまった。

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