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第11話

◇◇ ーー悪い予感というものは、人間の第六感が関係しているのだろうか、何故かしら当たることが多い。 アルバートも、例に漏れなかった。そう、予感は的中してしまったのだ。 朝、目を覚ましたアルバートは、すぐに自分の体の異変に気が付いた。 身体が異様に熱い。それに、頭がぼんやりとして、何も考えられることが出来ない。 アルバートはすぐに、自分の身体に、Ω特有の“発情期”が訪れたことに気が付いた。 「…っくそ、よりによって…」 アルバートは自分のΩ性を恨みつつ、何とかベットから抜け出し、重い身体を引きずるようにして部屋を出た。 ーーリオルに気付かれる前に、何とか早く家を出なければ。 急く心に対して、身体は思うように動かなかった。 少し進むだけで、足元がふらついて、目の前が揺れ息苦しくなる。 アルバートは数歩歩いた後、歩くことを諦めて、床を這い蹲るようにして進み始めた。 ーーリオルに、自分の醜態を見せたくない。 リオルに、嫌われたくない。 その必死な思いが、アルバートを突き動かす。 あと少し。 あと、数メートル。 もう少しで……。 「…アルバート?」 ガチャリと、ドアの開く音がした。 物音に気付いたのだろう。リビングの方から、リオルがひょこりと顔を覗かせる。 「……ん?」 いつもと違うことに気付いたのか、リオルはアルバートを見るなり、はっと目を見開き、駆け寄ってくる。 「来るな!」 アルバートは這い蹲った状態のまま、反射的にそう叫んだ。 リオルはぴくりと耳を動かし、尻尾をぴんと立てて、アルバートを見つめたまま立ち止まった。 「…それ以上、俺の側に来ないで」 アルバートは壁に手をつき、よろめきながら立ち上がった。 突然立ち上がったせいでくらりと眩暈がしたが、唇を噛み締めて耐え、何とかドアまで歩み寄っていく。 「…どうしたんだ、アルバート」 「行っただろ、…出て行くって」 「そうではなくて、……具合が悪そうに見える」 「…っ平気だよ、…問題ねえ」 アルバートは纏わりつくリオルの視線を振り払うように、半ば体当たりするような形で、乱暴にドアを開けた。 「…アルバート…」 小さく呟かれたリオルの言葉が、切なげに揺れる。 アルバートの心臓が、どくんと大きく鳴った。 「…ごめん、…ありがとう。また、どこかで…」 アルバートは、振り返る事が出来なかった。 押し出すようにそれだけ呟き、ドアを押して、外へ飛び出す。 そして、身体を引き摺るようにして、逃げるようにその場を離れた。

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