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第3話
ばななマンがダイニングテーブルに飛び乗り、仁王立ちになった。
気圧されて、兄弟ともに床に正座をした。そして脇腹を肘でつつき合う。いっせのせで飛びかかれば、へなちょこ野郎はイチコロじゃね?
だが隙を窺っているうちにタイミングを逸した。ばななマンが咳払いひとつ、街頭演説を行うように語勢を強めた。
「禁断の恋に溺れる価値があるか否か、ひとえにこれが鍵を握る。即ち」
思わせぶりに口をつぐむと、説き聞かせるような視線を昴にそそぎ、それから真輝に顎をしゃくった。
「極上の快感でどろどろに蕩かす。罪悪感を吹き飛ばすのが早道なのだ」
そう言葉を継ぐと、左手の親指と人差し指で輪を作り、その輪に右手の人差し指をくぐらせて、殊更ゆっくりと出し入れした。
快感、どろどろ。真輝は鸚鵡返 しに呟き、官能小説界の公式に当てはめて震えあがった。
「ちょっと待て。昴とセ……セックスすれば、おれはメロメロになるって寸法ですか。乱暴だ、弟に変な入れ知恵するな」
「桐原兄よ、きみは弟のことが嫌いか」
「いや、ふつうに好きだけど……」
「ならば問題はあるまい。その好きにラブな要素が加われば鬼に金棒。論より証拠で番ってみるがよい」
「両思いになってからじゃなきゃ、エッチしても意味はないんだ!」
昴が吼え、鼻先にバナナ型のバイブレータが突きつけられた。
「笑止。兄のパンツをかぶって、すぅはぁと匂いを嗅ぎながら、せんずりをこいたことがないと断言できるのか」
真輝は指で耳に栓をすると、体育座りに縮こまった。
かたや昴は毛づくろいをしてきまり悪さをごまかす猫さながら綿埃をつまみ取り、そんな昴の股ぐらに、ばななマンが足の裏をあてがった。
「偽善者は電気あんまの刑に処す」
厳然と言い渡すなり、足の裏を猛スピードで上下に動かす。摩擦でペニスから煙が立ちのぼるような究極の技、これぞ電気あんま。
昴は、もちろん悶絶寸前だ。
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