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第14話

 翌日、耳聡いララレルが、ことの詳細を調べてきた。 「どうやら、虹色狼を信仰する教会が、お前のことを絶対に認めないらしくて、お前を地下牢につないで好きなだけ王に犯させて子供を産ませ、王妃は別に隣国から姫君を迎えればいいと、王に進言したらしい」 「……ええっ」  「で、王様がブチギレた」  ロンロは頭を抱えた。自分がこの国にきてしまったために、大混乱になってしまっている。 「そんな、僕はどうしたらいいの」 「どうしようもないだろ」  ララレルは肩を竦めた。 「王様がどうにかしてくれるさ。だって、ここは彼の国なんだから。教会がどれだけ力を持ってるのか知らないけど、普通は王様のほうが偉いだろ」  そういって、ソファにぽすんと腰かける。 「つか、運命の番になっても、犬族だとこの扱いなのかよ。だったら、お妃狙いもちょっと考えちゃうな」 「え? 何? ララレル?」 「何でもないよ」  ララレルは肩をすくめた。話は終わり、とばかりにテーブルにのった菓子に手を伸ばす。  その横で、ロンロはいつも優しいグラングの顔を思い浮かべた。 「……グラングは、僕のことを、どう考えてるのかな」 「どうって?」 「こんな、厄介なΩが運命の相手になっちゃってさ。フェロモンにあてられて視界まで歪んじゃって。これじゃあ、詐欺だよ。結婚詐欺みたいなもんなんじゃない」 「まあそうだよな。王はお前自身を好きになって求婚してるわけじゃない。運命に、悪い魔法をかけられてるようなもんだからさ」  話しているだけでドンドン落ちこんでくる。ここに自分がいることが、間違っているとしか思えなくなってきた。 「王様に直接きいてみ? 『ボクのこと、ホントはどう思ってるんですか』って。お前ら毎晩やりまくってんのに、そういう話はしないの?」 「……したことない。いっつもベッドに入ると五回ぐらいして、僕が疲れはてて寝落ちするから」 「王様どんだけガッついてんの」    スゲーとちょっと羨ましそうな顔をする。  その夜、ロンロは消沈したままグラングを迎えた。彼は、昼間の諍いについては何も言わなかった。というか、グラングは政治的な話はロンロに全くしない。話してもわからないと思っているのか、それとも心配をかけないように気遣ってくれているのか。  ここに来てから毎日、グラングは、昼間は忙しく政務をこなし、夜になると待ちかねたとばかりにロンロのもとにやってきて早急に押し倒してくる。そして、疲れて寝てしまう。だから、まともに会話などしたこともなかった。  今夜も同じ状態で、互いに身を近づければ、フェロモンに誘惑されて、難しいことが考えられなくなりあっという間に行為になだれこんでしまった。  ドロドロになるまで愛されて、意識を失う。  広いベッドの中で目を覚ましたとき、時刻は明け方になっていた。 「……あれ」  ベッドには、ロンロしかいなかった。 「……グラング、どこ?」  窓から見える空が、ほんの少し青くなっている。全裸のロンロは、素足を床におろした。そのとき、ザザッと音がして、窓から一匹の大狼が入ってきた。  薄暗い中でもよくわかる。そのしなやかで逞しい姿は獣化したグラングだ。 「起きていたのか」  グラングは朝露のついた身体をブルッと払って、ロンロのもとへとやってきた。

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