21 / 28
第21話 信頼と愛情
グラングは狼に姿を変えると、ロンロも犬に変身させて、首根っこをくわえた。
そうして森の麓にある川までひとっ飛びで駆けてゆき、一緒に水の中に飛びこんだ。身体を隅々まできれいに洗って、やっと人心地つく。川辺でひとしきり遊べば、すっかり夜になっていた。
城に戻ってベッドに入ると、すぐにヒトになる。そして抱きあった。
「グラング、僕、あなたに目が悪いなんて言ってしまってごめんなさい」
「いい。気にするな。あれのおかげで、私はお前のことがよりいっそう好きになったのだから」
「ええっ。どうしてですか」
「事実をハッキリと口にされて、衝撃を受けたのだ。今まで、私に面と向かってあんなことを言った者はいなかったからな」
「そ、それは……そうでしょうね」
ちょっと冷や汗が滲んでしまう。けれどそれも可愛らしいと言うように、グラングはロンロにキスをしてきた。
「これからも、私のそばで真実を伝えてくれ。お前のことは信用している」
小さなロンロを包みこむようにして抱きしめる。
ロンロは護られているようで、同時に、この孤高の王を護っているような、切ない気持ちにもさせられた。
ともだちにシェアしよう!