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運命②

「ここでっ!ここでおろして下さいっ!」 突然の必死な声に、夢見心地なひと時が現実に引き戻された。 訝る俺に 「…もうすぐ俺の家です。 あなたを見たら、俺の親はきっと難癖を付けて金の無心をするでしょう。 そんな事に巻き込みたくないのです! だから、だからおろして…お願い…」 うるうると大きな瞳に涙を溜めて、必死に伝えてくる彼に根負けして、そっとおろしてやった。 「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」 ぺこりと頭を下げて、潤んだ目で見つめる彼に 「また、また会えるか? あの桜が満開の…今頃の時期に…あの場所で君に会える?」 驚いたように一瞬固まった彼は、次の瞬間、花がほころぶように笑った。 「…はいっ!俺、あの場所で待ってます! 今度は打つからないように、真っ直ぐ前を向いて!」 遠くから、名前を呼ぶ声が聞こえた。 「あっ!早く、早くここから離れて! 見つかったら大変! 俺、行かなくちゃ!」 くるりと反転すると、慌てて足を引き摺りながら、駆け出してしまった。 「あっ…」 名前を聞く僅かの時間も許されず、俺は小さくなる後ろ姿を見送り、1人その場に立ち尽くしていた。 「ルカっ!ルカ!何処をほっつき歩いてんだ! 仕事しないと晩飯は抜きだよっ!」 「ごめんなさい!すぐにやります!」 ルカ…ルカというのか… 胸に灯った小さな明かりに包まれて、久し振りに安らいだ気持ちに満たされて家路を急いだ。 それから半年後、ルカと再会しようとは思わなかった。 まさか我が楼閣に、親の借金のカタに売られて来ようとは。 あの時に見た笑顔は消え失せ、ぶるぶる震える人間のΩの少年。 それとは対照的に、ギラついた目といやらしい欲にまみれた臭いの両親。 可哀想に、返済するまで二度とここからは出られない。

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