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躊躇⑤

今頃、誰だ。 『訓練期間中は誰も来るな』と言っておいたのに。 苛立ちながら、無言でドアを開けた。 「瑠夏…」 そこには、先程出て行ったはずの瑠夏が立っていた。 平静を装って声を掛ける。 「どうした、何か忘れ物か?」 瑠夏は黙って俯いているだけ。 「瑠夏?」 次の瞬間、瑠夏が俺の胸に収まっていた。 「瑠夏!?」 俺の胸元にしがみ付いて離れない瑠夏は、やっと聞き取れるような、か細い声でささやいた。 「…お願いです…今夜最後ですから…もう一度、もう一度だけ“訓練”を俺にして下さい… お願いします…」 花のような甘やかな香りに包まれた。 それを嗅いだ瞬間、俺の毛穴という毛穴から、αのフェロモンが噴き出して止まらなくなった。 勢いよく瑠夏を横抱きにすると、ベッドに直行し放り投げた。 数度バウンドする瑠夏の身体を押さえつけると 「…俺を煽ってその気にさせて、借金を減らそうとでも言うのか?」 そんな侮蔑を込めた言葉に、瑠夏はふるふると首を振って、ただ俺を見つめている。 その目には薄っすらと涙の膜が張っていた。 俺は、理性の砕け散る音を感じながら、瑠夏の服を1枚1枚剥いでいく。 「手加減はしない。」 冷淡に告げると、目を閉じた瑠夏の瞳から涙が一筋零れ落ちた。 それを合図にするかのように、俺は瑠夏に襲いかかった。 楼主と男娼いう立場も、獣人と人間、αとΩ等という身分の差も、全て思考の外に投げ捨て、ただの雄として瑠夏を愛撫し愛した。 優しく激しく抱く俺に、瑠夏はしがみ付き時に背を反らせ、泣きながら身体を開く。 このまま俺だけのものにできればどんなにいいか。 瑠夏は「…楼主様…楼主様…」と、俺の仮の名を呼び続ける。 無理矢理引き戻した理性の助けを借り、3度目の交わりで、やっと身体を離した。 「…楼主様、まだ、まだ大丈夫ですから…」 喘ぎながら言葉を紡ぐ瑠夏に 「俺が教えることはもうない。 瑠夏、明日の初お目見えに備えて、身体を清めるように。」 ワザと冷たく言い放った。

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