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決別③
千尋は哀しげに微笑むと
「あちきの思いびとは、もうこの世におりませぬ。
誰の元へ行っても、そのひとへの思いは消えやしません。
それならば、きっちりと返済してから、何処とへでも ゆらりゆらりと流れていきんすよ。」
「そうか、『思いびと』か…」
「…楼主も…そんなおひとがいるのでは?」
「そう見えるか?お前もこの面の下の顔が見えるのか?」
「さぁ…」
ふっ と微笑むと立ち上がり
「お喋りが過ぎました。では、これにて…」
待たせていた小姓を2人従え、腰をしならせて行ってしまった。
一生叶わぬ思いを持ち続けて生きる…それでもいいのかもしれない。
そして運命 の時が来たら、肉体は大地へ、魂は銀河へ旅立つだろう。
今はただ、あの子の幸せを願おう。
桜の舞い散る中で見たあの笑顔が、またあの子に戻ってくるように。
大きくため息をついて、また執務室へと戻る。
その足取りは、枷 をつけたように重かった。
イリアスがドアの外で待っていた。
「楼主…お城から使いの方がお見えです!
あなたを探しにナッティを行かせたのですが…」
「使い?今更何の用だ?」
「あー!楼主!見ーつけたっ!」
ウサギの獣人、ナッティが駆けてきた。
「これ、ナッティ!あなた、遅いですっ!
分かりません。お急ぎの様です。
まさか、国王様に何か。」
「取り敢えず会おう。」
首を捻りながらドアを開けた。
「お待たせしました。あなたは…」
「おぉ、ルーク様。ご立派になられて。
ご無沙汰しております、執事のアルミナでございます。」
ヤギの獣人、アルミナが深々と頭を下げた。
「こんな所まで…ご足労をかけました。
俺に何か?」
「はい。単刀直入に申し上げます。
お城にお戻り下さいませ。」
「……何故?俺が?」
アルミナが大きく頷いた。
「国王様のお具合が芳 しくありません。
皇太子はまだ小そうございます。
国王様の弟君 はお亡くなりになり…
お妃様は…精神を病んでどなたのことも理解できません。
ですからあなたが次期国王に」
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