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決別④
一方的に話を進めるアルミナの言葉を遮った。
「ちょっと待って下さいっ!
今更、何を仰ってるんですか?
俺は…俺は、認められていない子供だった!
いくら王の血を引くとはいえ、世間に顔向けの出来ない存在として育ったんだ!
あなた方は母の命を奪い俺を追い出し、何度も俺の命をも狙った。
ここは…そんな俺に与えられた唯一の居場所。
それなのに、この場所さえあなた方は奪うと仰るのかっ!?
…俺の、俺の存在って何なのですか?
俺にとってここは俺の城で、ここで働く者達は皆、国民であり仲間なのです。
あなた方にとって国は大切であるのと同じように、俺もまた、この大切な城と仲間を守りたい。
…お分かりいただけますよね?
俺でなくても…従兄弟にあたるキース殿がいらっしゃるではないですか。
腹に宿ったその時から紛うことのない立派な人生を約束された方が。
…あの方なら国民も納得する。
俺は…俺のような汚れた出生の、後ろ指を指されるような仕事をしている者なんぞ、誰が国王に選ぶものか。
彼にお願いするとよいでしょう。
俺の事はもう、お構いなく。
ただの楼主だとお思い、打ち捨て下さい。」
「…ルーク様…」
「お帰りはあちらです。
ご足労ありがとうございました。」
「ルーク様っ!
本当に、本当にそれで良いのですか?
このチャンスを逃せば、あなたは一生」
「アルミナ殿…ここにおいでになった本当の目的は、俺から『国王にはならぬ』という確約を取り付けるためであったのでしょう?
ご安心を。俺は王位を継ぐ気など微塵もない。
国王様に『お身体にお気を付けて健やかにお過ごし下さい』とお伝え下さい。
俺は、もうお会いする事はないから。
イリアス!ご案内を!」
「…ルーク様…確かに、確かに承りました…
どうぞ、どうぞお元気で…」
ドアが静かに閉められた。
こうして俺は、心を残す全てのものと決別をする事になった。
それでいいのか?
本当にそれでいいのか?
俺の脳裏には瑠夏の柔らかな笑顔が浮かんでいた。
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