26 / 29

告白①

「瑠夏、瑠夏…起きなさい。」 早朝、まだ金星達が瞬きを鎮めない時刻に、アクトにそっと起こされた。 「…アクト?こんな時間に」 「しっ。静かに。 出掛ける準備をしなさい。 楼主様がお待ちだから。早く。」 意味が分からないまま急き立てられ、慌てて支度をした。 皆が寝付いた部屋の前を音を立てないように、注意して進む。 楼主様? 一体何処へ連れて行かれるんだろう。 まだ罰は続いているの? ここを追い出されたら…何処に行けばいい? 胸の鼓動がどくどくと駆け足のように鳴り、手の平がじっとりと嫌な汗をかいている。 「楼主様、瑠夏を連れてきました。 …行ってらっしゃいませ。」 「うん。ありがとう。では後を頼んだぞ。 昼までには戻る。 瑠夏、こちらにおいで。」 春とはいえ花冷えのする早朝のこと、気温の低さと恐怖で俺は震えていた。 ふわりと暖かなコートが肩に掛けられた。 驚いて見上げると 「まだ冷えるからな。さ、行くよ。」 何が何だか分からないまま後部座席に乗せられ、楼主様の隣に座らされた。 見る間に楼閣が小さくなっていく。 「あの…何処へ? 俺は罰で捨てられるのですか?」 ふるふると震えながら問い掛けた。 すると、楼主は目を見開くと笑い出した。 「…そんな…『捨てる』なんて… 着いてからのお楽しみに取っておこうか。 エリフォン、ちょっと急いでくれるか?」 「はい、承知致しました。」 運転手の豹がゆっくりと加速していく。 車は滑るように街を抜け、しばらくすると見慣れた光景が現れた。 「ここは…」 間違いない、俺の…故郷だ。 戸惑いを隠せないまま楼主様を見遣ると、微笑んで頷いた。 「ここでいい。停めてくれ。 エリフォン、しばらく待っていてくれ。 瑠夏、降りるぞ。」 どうして、何故ここへ。 ぎゅっと両手を握り、ぎこちない動きで車を降りた。

ともだちにシェアしよう!