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第20話

 時に人はあっけなく他者を裏切る。  そして保身のために都合のいい理由をこじつけ納得するのだ。  表面の綺麗事しか知らないイチが、そんな人の狡さや汚さを知ったらどうだろう。けれどそれもイチには必要な事で、だから俺は敢えて汚い奴を演じるのだ。  ベッドに腰掛けた俺の前に立つイチの手首を掴むと、まるで女性のような細さに一瞬ギクリとした。しかしイチはアンドロイドで、その内側にどれ程のパワーを秘めているのか計り知れない。  だから俺は悪くない。  掴んだ手首を強く引くと、イチはあっという小さな悲鳴と共に胸に転がり込んで来た。 「なに?彩我、乱暴……」  その問いには答えずに、ベッドのサイドデスクに腕を伸ばすとパソコンのモニターが点く。 「若奥様昼下がりの情事」 「読むなよ」  始まったのはAVで、イチは不思議そうに画面に見入った。 「やって、あれ」  俺は顎でしゃくって画面を示す。映像はニコニコ笑顔の若奥様がフェラを始めた所で、イチにそれを真似ろと言ったのだ。  初めての人にはかなりの難題だけど、そこはセクサロイド。イチはにんまりと唇の両端を釣り上げて、得意分野の披露の時が来たとばかりに笑った。それがまた冷めるわけで、どこまで行っても俺たちは反比例する。  こんなにもどかしくて悔しい事があるだろうか、こんなに好きなのにまるで通じない。  そもそもこれはもどかしいという感情なのだろうか。  俺だってこんな思いをするのは初めてで、分からない。分からない。分からない……。  なぜ?  知らないのにどうして俺は自分の感情をもどかしいだと思ったんだろう。  まるでイチがインプットされていた入浴介助を初めてやった時のように、すんなりと知っていた。  インプット?まさか。  分からない、分からない、分からない。 「彩我」  ハッとした時、目の前に俺のジーンズの前を開けようとしているイチが居た。

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