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第9話

「…はぁ」 仕事を終えて外に出ると 雨が降っていた 憂鬱な気持ちがより沈んでいく 今日はアイツは塾の日では無い為、顔を合わさずに済んだが、それでも気分が上がる事は無かった 自分のアパートの階段を上りながら傘を畳んでいると、自分の部屋の前に誰かいる事に気が付いた 「…あ」 そこにいた人物に、ドキッと心臓が跳ね、つい溜息を漏らしてしまった 「…せ 先生…ごめんなさい…あの…」 「…家帰れって言っただろ⁇」 横芝 湊をドアの前から遠ざけると、手早く鍵を開けた 「先生‼︎」 部屋に入り 背中を向けたまま、グッと傘を握り締めた 「昨日は… お前のフェロモンに当てられただけだから… 俺 面倒事とか御免だし…悪いな…」 振り返りもせず、わざと大きな音を立てて閉めた後 その場にしゃがみ込んだ 経験の無い罪悪感に、何故か涙が出そうになった 傘から伝って 雨水が玄関先で水溜りを作っている じわじわと出来ていくシミが、俺の心を浸食していく様に感じた

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