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その瞳に溺れる12

「竜也」 「ご、ごめんなさい。余計な、心配かけてしまって」 「あんたはほんとに危機感がないな。具合はどうだ。吐き気は?」 「それはないです。ただちょっと目が回って」 「ったく、なんであんなに強いのを飲んだんだ」 「前に飲んだことあって、わりとおいしかった覚えが」  それは絶対に飲んだんじゃなくて飲まされたんだ、そう思うけれどまったく気づいていないのであれば言ったところで無駄だ。これは実害を感じている以外にも色々とありそうだ。いままでお持ち帰りされなかったのは不幸中の幸いか。よく無事でいたものだと思う。 「竜也、ここ、どうしたんだ?」 「え? なんですか?」 「ここ、キスマークがついてるぞ」 「えっ!」  壁にもたれて立っている竜也の首筋を撫でると大げさなくらい肩が跳ね上がった。そして何度も目を瞬かせて思考を巡らせるように視線を動かしてから、慌てたように洗面台の鏡に目を向ける。しかしそれだけでは見えなかったのか、慌ただしく鏡に近づいて首筋をさらした。 「こんな痕まで付けられて、ここまで立ち上がらせて、俺が来たのはお邪魔だったか?」 「あっ、こ、これは、違いますっ! そういうのじゃ、なくて、し、自然現象と言うか」 「ここを触らせたってことか」  鏡に向かう身体を後ろから抱き寄せて下腹部に手を伸ばせば、見る間に顔が赤くなって耳にまでその熱が移ったのがわかった。鏡越しに見つめると潤んだ瞳に見つめ返される。ここで行いを叱るのはお門違いだろう。  本人にその気があったわけではなくやむを得ない状況だった。しかしあまりにも無防備すぎる部分は目に余る。 「やっ、九竜さんっ、駄目」 「どんな理由であれ無理に迫る男が悪いのは確かだ。それでも今回のはあんたの隙が原因だってことはわかってるだろう」 「九、竜さんっ、だめっ」 「あんたが悪いとは言わない。けど少し自分の身を大事にしてもらいたい」 「き、気をつけます! だ、だか、らっ、……触っちゃ、やです、んっ」  頭が正常な判断をできない時にこうして仕掛ければ、余計にまともな判断ができなくなる。しかしそれをわかっていても苛立つ気持ちは収まらない。  前をくつろげたデニムに手を滑り込ませて軽く立ち上がっていた熱を扱けば、すぐにそれは芯を持ち手の中で震える。だがその刺激は酔った身体には過ぎるものなのだろう。指先で軽くこねるだけで足を震わせ洗面台にしがみついた。 「嫌です、こんなとこで」 「俺が来なかったら同じことになっていたと思うぞ。羽目を外すなと言っただろ」 「ごめんなさい」 「……もういい、こっちを向け」 「あっ、……ん」  俯いた顔を持ち上げて後ろから覆い被さるように唇を塞げば閉じた瞳から涙がこぼれた。怖い思いをしたのにまたこんな風に辱められて、不安でならないのだろうと思う。それでも無理矢理にでもすべてを上書きしたくなる。  唇を滑らせて首筋を撫でると薄く色づいたそこに噛みつく。きつく噛みついてきつく痕を残し、他人の欲で濡れた熱を自分の手に吐き出させた。 「く、りゅ、さんっ」 「物足りなくなったのか? またここ、立ち上がってきたぞ」 「だって、九竜さんが、触れるから」 「身体、こっちに向けて掴まっていろ」 「だっ、駄目です! 九竜さん、立ってくださ、……ぁっ」  身体をひっくり返して向かい合うと躊躇わず膝をついて、可愛らしく震える熱を喉の奥まで咥え込んだ。しゃぶるたびに声が漏れて、それに自分で気づくと一生懸命に飲み込もうとする。しかしほとんど飲み込みきれずに甘い声が降ってきた。 「ぁんっ、くりゅ、うさんっ、あっあぁっ、だめっ、……もう、イキそうっ」  逃げ出そうと引いた腰を鷲掴み押さえ込めば、快感をこらえるように太ももが震える。そしてひっきりなしに甘やかな声が聞こえて、次第に刺激を求めるようにいやらしく腰が揺れ始めた。小さな尻を撫でて割れ目をなぞるとぶるりと身体を震わせ甘い欲を吐き出した。

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