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二話

 貴方は兄弟の前で喘いだことはあるだろうか。いや、無いだろう。わかっている。  意味の無い、ただの質問だ。  「ただいまー」  二人の声が、やけに広い家に響き渡る。やはり返事はない。  うちの親は、帰宅が遅い。帰ってきても、ほぼ母一人。父親もたまに家に帰って来てくれる。そのためか、俺達兄弟のお小遣いは他の家と比べても多い。俺の数少ない自慢の一つである。  親がなかなか帰って来ないことに、寂しく感じたことはない。それは、晴斗のお陰なのだろうか。  それにしても、ここまで広い家なのに、何故風呂の面積は大して広く無いのか。謎である。  「先風呂入る? 俺料理しとくで?」  前述した通り、親は、帰ってくることは少ない。 だが、十分な量の食費を置いていってくれている。  そのため、成長期二人の食事には、困らなかったら、  俺が、どうしようかと悩んでいると、 「あ! 今日もまた風呂一緒に入る?」  晴斗が沈黙を破り、そう問いかける。いや、晩御飯はどこいった。  どう返事するか悩み、少しの間が空いてしまう。晩御飯のことを言うべきか、きちんと返事をすべきなのか。  「んー。一.二か月ぶり位やっけ?」  どうしても晴斗とお風呂。そうなると、精通のときのことが頭によぎる。  「そんくらいやな」  何も覚えていないような。いつも通りの晴斗の声に、少し恥ずかしく感じた。  「じゃあそうする?」  俺は少しの期待をこめ、ばれないように、そう言葉を返した。  「おっけー、じゃ、いこ」  晴斗の言葉にやはりと言うのか。心拍数を上げた。  俺と晴斗は脱衣場に行く。練習着から順に、服を全部脱いだ。兄弟とはいえ、裸を見られるのは、少し恥ずかしい。  赤ん坊のままの晴斗に、興奮したのか、性器が大きくなってくるのを感じた。  「冬樹またたってるやん。最近抜いてなかったんか?」  そう問いかける晴斗の性器も、少し大きくなって見えた。  「うるさい」  晴勇は、反抗的な態度を見せる、俺の性器を持ち、刺激を与え始めた。  「ちょ、脱衣場はさすがにまずいやろ」  少しまだ冷静な俺の一言に晴斗は、  「それもそうやな」  と、持ち前の笑顔を見せた。  「おっけー。冬樹。おいで」  風呂場に入ると、晴斗の膝にのせられた。優しい笑みを浮かべた、晴斗に触られる。晴斗の心音が、身体を通し、聞こえてくる。  あつくなり。  晴斗を欲し。    晴斗の事だけを思い浮かべる。  息が漏れる。  「感じてんのか?可愛いな」  晴斗からの言葉攻めに、更に興奮した。俺の心臓の音は晴斗に届いているのだろうか。    「はる……と……」  知らず知らずのうちに漏れでた言葉は、晴斗に届けるにはずいぶんと有り余る距離だった。  俺は晴斗の名前。晴斗という三文字を吐き出してしまった事。それは俺の顔を林檎のように赤く染めるには十分すぎた。  何?と問いかけてくる晴斗の声や瞳。それが、今ばかりは少し鬱陶しく感じた。  そうするうちに俺からは、喘ぎ声ともとれなくない、声にならない声が漏れる。  「はると……そろそろ出そう」  俺がそう呟くと海斗は、手の動きを速め、ラストスパートに取りかかった。   ーーイクっーー  俺は、果て、白い液を、海斗の手の上に出した。  しかし、晴斗はその手を緩める事はなく、俺の性器に刺激を与えつづけた。  「晴斗!?何やってんの!?」  「もう一段階上の気持ちよさに挑戦してみよっか」  くすぐったさと恥ずかしさ、喪失感で死にそうになる。  「なんかこしょばい」  「我慢して」  晴斗の手つきは、更に速くなった。     ーーそんなこと言われたって……  俺は腰が抜けるような感覚がした。  声が漏れないように舌を噛む俺に、  「そっちの方がエロいな笑。いいよ、喘いでみ」  ふわりと晴斗の香りが漂う。   ーー喘いだら、どうなるんだろう……    「……あッ」  俺は、好奇心から、声を漏らしてしまった。  一度漏れた声が、我慢できるはずもなく、俺は喘ぎ続けた。友達に、教えてもらった、喘ぐということ。喘ぐことが、ここまで興奮するとは思わなかった。  「冬樹超エロい。俺もやばいかも」  そういう晴斗のモノは、完全に勃っていた。  俺の方にも余裕はなく、痺れを感じ始めていた。   ーーやばいーー  晴斗の方から吐息が聞こえてくるのがわかった。  俺の性器から、透明な液体が勢い良く飛び出した。    声にならない快楽が俺を襲う。  息が漏れる。  「はる……と……」  呂律が回っていたかも分からない。俺は、自分が涙を浮かべていることに、気がつく。  晴斗は、何故か少し寂しげな表情をしていた。  「……んじゃ、先上がっとくわ」  「まだ、体も洗ってないのに?」  俺は聞いてから少しまずいと思った。    「……もうやばいから」  笑いながらそういう晴斗。俺には無理をしているようにしか見えなかった。晴斗は、先に料理を作ると言う名目で、先に風呂から上がってしまった。    風呂には、反響した、無機質な水の音が、聞こえていた。

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