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塔の中
「失礼、ディートリヒ伯爵」
レオはジャンに後ろから話しかけた。
ジャンはその時はちょうどクロエを探していた。
「レオナルド王子、この度は晩餐会に招待していただきありがとうございます」
「いや……実は先程クロエにも挨拶をした」
「クロエに会ったのですか。さっきから探しているのですが、見つからなかったのです」
ジャンは少しホッとした。
レオと話をしていたなら、近くにいるかもしれない。
「クロエ、まだ戻っていないのですか?もう、十分以上前に別れたんだが……」
「そうなのですか?……どこかで迷っているかもしれないな」
こういう大きな宮殿に慣れていないクロエはどこかで迷ってしまったのかもしれない。
「レオナルド王子、少し探してまいりますので、また改めて挨拶させてもらいます」
「私も探そう」
何となく胸騒ぎがする。
それに先程から第二王子のリオン王子もいない。
何かに巻き込まれてるのではないか……。
そんな心配をしていると、ヘルマンが早足でやってきた。
「ジャン。リオン王子と従者が一緒に東の塔に入っていった。何か大きな袋を持って入っていったみたいなんだ」
「袋?……クロエがさっきから見当たらないんだ」
「もしかして……その袋って……今、僕の執事が塔に向かってる。レオナルド様、今度はあなたが狙われているかもしれません」
「リオンか……」
心当たりがあるらしく、苦々しく兄の名前を吐き捨てる。
ジャンは急いで塔の方へ走っていった。
クロエが目を覚まし、辺りを見渡すと何も見えない暗闇の中にいた。
体は何かで縛られているらしく、身動きが取れない。
ここ、どこだろ……。
もがくように体を動かすと、「目が覚めたようだな」と低い声が聞こえた。
袋か何かに入れられていたらしく、頭だけ出される。
薄暗い部屋の中で、急に馬の顔が見えて、クロエは小さく悲鳴をあげた。
「馬の獣人は初めてかな?クロエ=ディートリヒ」
その隣を見ると、黒い革張りの椅子に座った黒いライオン、リオンが座っていた。
「レオナルドが君のことをいたく気に入っていてね。私も挨拶をしたいと思っていたんだ」
リオンはクロエの顎を掴み、顔をジロジロと見る。
「褐色のヴィーナスか。珍しいヴィーナスだな」
そう言うといきなりクロエの口に無理やりキスをしてきた。
大きな舌が入ってきて、クロエの口の中を犯していく。
「ん……っふ……ん、いや……あ……」
口を離され、リオンは何かを口に含み、再びリオンにキスをして、流し込まれる。
甘い飲み物で、だんだんと体温が上がってくる。
心臓はドキドキし、股間も熱く濡れているような感じだ。
袋を全て取り去り、馬の獣人がクロエのズボンを脱がせると、下着にシミができていた。
「初めて会った男にこんなに濡らされて……やはりオメガは下等な生き物だな。特別なオメガだなんて言われているが、結局お前らはアルファの子どもを産むための道具だ」
「ち、違う……俺達は道具なんかじゃない!……っああ!」
下着の上から、リオンはクロエの蕾を弄り始める。
「オメガにこんな高価な服は勿体ない」
縄を外し、着ていたものを全て剥ぎ取られ、生まれたままの姿で床に転がされる。
(こいつの目、俺を蔑んできた大人と同じ目をしてる)
「あんたが……王子だなんて……最低っ!レオの方がよっぽど王様に相応しいよ……っやぁ!!」
貫かれるような痛みを下腹部に感じ、恐る恐る見ると自分の蕾にリオンの茎が突き刺さっている。
クロエはぞわりと総毛立つ。
「あ……何して……」
「どうだ?好きでもない相手に処女を奪われた感想は」
「最悪……っひ……あぁ!」
腰を持ち上げられ、激しくピストンされると、クロエの口からは甘い声がこぼれる。
「えらく甘い声が出ているな。あぁ……もしや、ディートリヒ伯爵ともこういうことを?」
「違……!ジャンはこんな、あっ、こんな乱暴なこと、おっ、しな……いぃ!!」
暴かれていく自分の秘部は擦られ、熱を持ち、ひたすらいたぶられている。
涙が零れてくる。
怖い……怖いよ……助けて……
「ジャン……っ助けて……!」
「最後はお父さんを呼ぶんだな。ここは塔の最上階。ここまで来るには十分以上かかるんだ」
得意げにリオン王子が話していたその時、バンっと何かが破られた大きな音がした。
古びた扉は外れ、そこにはチーターの獣人が立っていた。
「ジャン……!」
「クロエ……!!」
クロエの霰のない姿を見て、普段怒らないジャンもカッと頭に血が上った。
「何故こんなに早く……!?」
リオンが驚愕していると、ジャンは睨みつける。
「チーターの俊足を舐めるなよ。こんな塔の階段など三分もあったら登りきれる。それよりも早く、その汚いものを抜け」
近くにいた馬の獣人の首めがけて、手刀を振り下ろし、一撃で仕留めると、続けて、リオンのこめかみに回し蹴りを叩きつけた。
あまりに早く、鮮やかな技にクロエは圧倒してしまった。
リオンは床に吹っ飛び、気を失ってしまった。
二人の大きな獣人が倒れた拍子にホコリの溜まった床は粉塵が巻き起こり、クロエは思わずむせてしまった。
ジャンは自分の長いコートを脱ぎ、クロエにかけると、そのまま抱き上げ、塔の長い螺旋階段を降りていく。
「ジャン……ごめん、俺、処女取られちゃった……。もうヴィーナスになれないよね……」
こんな形で奪われてしまうなんて思わず、クロエは悔しさで目の前が真っ暗になる。
「俺、もうジャンの家にいられないよね……?」
元々、ヴィーナスになるためにジャンの養子になったのだ。
ヴィーナスになれなければ、養子でいる意味は無い。
螺旋階段を降りている途中、レオが慌てた様子で階段を駆け上がってきた。
「クロエ……あいつ、なんて事……」
何かを察したようにレオは青ざめる。
「レオナルド王子。あなたの兄上は私の大切な息子に大変なことをしました。王族の獣人だろうと許せません」
静かな声だが、じわりと感じる怒りにクロエはゾッとした。
「……申し訳ないことをした。兄に代わって、陳謝する。この事は必ず、国王陛下に報告し、厳罰に処してもらう」
レオは頭を下げ、最上階に向かっていった。
塔を出ると、短く「帰ろう」とジャンは馬車を人家のない所へ呼び、家に帰った。
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