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第5話
何の予定もない休日、天気も悪かったせいで、俺と彼は外にも出ずに、ゆっくりと自宅マンションで過ごした。
お手伝いさんも休みだったから、俺を中心に彼と一緒に食事を作ったり、日本語のレッスンをしたり、それなりに充実した休みを過ごすことができた。
そのマッタリとした休みの合間、そんな話を聞いたわけだ。
「よかったじゃん。人の結婚なんかどうでもいいと思ってたけど、シェフのことはなんか素直に嬉しいわ」
「あいつは優しくて周りのことがよく見えてるからな。首相を支えるにはもってこいな人材だ」
ベッドルームに入ってもなんとなくその話に終始してしまう。
愛用のヨレヨレのTシャツとボクサーパンツ一丁で、ゆっくりとキングサイズのベッドに横たわった。
間接照明で落ち着いたライトブラウンに染まる部屋は、大きなガラス窓の向こうに街の夜景が一望できる。かすかに反射してくる街の明かりも、部屋の柔らかな雰囲気が受け止めた。
「今日はこれにしよう」
ベッドルームのDJは、レコードの並んだ棚から今日の1枚を選ぶ。彼好みの渋いジャズを聴きながらベッドに横になるのが、いつもの夜の過ごし方だった。
「今日はどんやなつ?」
聞いたところで知らないアーティストなんだけど。
うつ伏せになって足をバタバタしていると、部屋の隅のでっかいラッパのついた蓄音機にレコードをセットする。
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