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第28話

「御機嫌よう。はじめまして王子、私は」 彼が軽く会釈しながら自己紹介をする。王子様は彼の素性を聞くと「僕のスマホは貴方の会社のものだ」と言って微笑んだ。 王子様は背も高くて、彼より少し低いくらいだった。俺は彼の腕にしがみついたままじっとしている。人見知り感満載で空気みたいなオーラを出してみるけど。 「こちらは私の妻です」 彼が誇らしそうに俺の腰に手を回してきたために、オーラを出すのを止められてしまった。 「ちょっ」 「私の自慢の妻です。彼は日本人で、私も今日本で暮らしています。どうぞお見知り置きを」 構うことなくペラペラと、そしてちょっと鼻の下を伸ばしながら言う。 彼の顔を見上げると、王子様は俺のことをじっと見つめていた。 「へぇ、日本人」 蛇に睨まれた蛙。という表現は正しくないんだろうけど、綺麗な顔に上の方から見つめられたらちょっと萎縮する。 「日本人に知り合いはいないからなぁ。日本人っていうか、東洋の方に知り合いがいなくて」 目だけはじっと俺を見て、口元だけ微笑む。 「お見知り置きを。奥様」 静かに俺の手を取って、軽く腰を落とした。 言葉を発することすら躊躇われていたのを、彼が少し慌てて「これは恐れ入ります」と言ったのを機に我に返った。

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