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第30話

俺たちの泊まる部屋は、王子と初遭遇した現場からすぐの場所にあった。すぐ壁の向こう側といっても過言ではないほどに。 「こちらでございます」 おっちゃんが猫足のドアノブをひねる。 ドアの向こうから、光が溢れ出した。 「うわ眩しっ」 一瞬目が眩んだ。途端に目の前に真っ白いタイルの床と、壁代わりにも等しい大きな窓が目の前に現れた。入り口の奥に、エントランスのような空間がある。そこに、でっかくて白い猫足のソファが1つ。花や大きな葉っぱが部屋のそこかしこに散りばめられ、明るく開放感のある部屋は東南アジアのリゾート地の部屋を思わせる。 「日本からいらっしゃるということで、アジアのリゾート地をイメージしメイクさせていただきました」 思っていたことそのまま言われてちょっと拍子抜けした。同じアジアでえらい違いなんだけど、と思いながら、部屋の雰囲気は嫌いじゃない。 「素晴らしい。ホテルに改装されたとはいえ、古い城の中とは思えないな」 彼は満足そうに頷く。 「まぁな、本当に城の中とは思えないよな」 おっちゃんに促されるまま中に入る。正面エントランスから向かって左手に部屋が折れ曲がっていて、真っ白いタイルと草花の装飾は奥の方まで続いていた。奥の壁は見えるけれど随分遠くて、ここでどんなに強い力でボールを投げても、向こう側の壁には当たらないと思う。

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