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第31話
途中10人も座れそうなソファや馬鹿でかいテレビ、6人がけくらいのダイニングテーブルなんかを挟むけど、壁のない空間が広がっている。
「すげ……」
初めて彼と出会った高級ホテルを思い出す。あそこもかなりのでかい部屋だったけど、夜だったし黒が基調だったし、こんなに広くはなかったと思う。
「奥にベッドルームとバスルームがございます。ごゆっくりおくつろぎください」
おっちゃんはそれ以上特に何か言うわけでもなく、そのまま去っていった。
「あぁ、少し開けておいてくれないか、換気をしたい」
ネクタイを緩め、暑そうな仕草をした彼が言う。おっちゃんはドアを閉めず、少しだけ開けて部屋をでた。
2人きりになると、余計に広くてちょっと緊張する。
「ふぅ、疲れたな、ゆっくりさせてもらおう」
対照的に、彼はすぐさまジャケットを脱ぎ、入り口のソファの背もたれに乱暴に引っ掛けた。
「ハニーもネクタイを緩めたらどうだ?」
まるで家にでも帰ってきたみたいなくつろぎぶりだ。
「ったく、お前よくそんな平気でいられるよなぁ、城だぞ? ホテルだぞ?」
「もちろん知っているさ、こんなにすごいホテルだとは思わなかったけどな」
言いながら、ゆっくりと部屋の中を眺める。
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