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第32話

「これは素晴らしい花瓶だ。珍しい焼き方の陶磁器だな。花をいけるのがもったいないくらいだ」 「この絵画はあまり有名ではないが、印象派の画家として知る人ぞ知る作家の作品だ。素晴らしい」 なんて、美術館にでも来たみたいな話ぶりで。 「お前そんなに美術品詳しかったっけ?」 美術品の話なんか聞いたことがなかったけど、宝石商をやっていた時にいくらか勉強したんだ、なんて言われたらちょっと納得してしまった。 「まぁ鑑定士よりは勉強不足だけどな。素人よりは見る目があるって程度で」 「いやいや十分だって。俺なんかさっぱりわかんねぇって」 俺がわかるのは、見た目で安そう高そうってくらいで。部屋の奥まで行ってしまった彼を追いかけるように部屋の中を眺める。 奥の方にベッドルームとバスルームがあるって言ってたけど、ズドンと長く広い部屋のすぐ左側に、区切るようにまた猫足の扉が二箇所付いていて、1つはバスルーム、1つはベッドルームになっていた。 「風呂超広い」 電気をつける。赤っぽい紫色の壁と白くて円形ジャグジーがあって、ラグジュアリーだけどちょっとラブホっぽくも見える。 寝室も、暖色のシャンデリアがぶら下がっていて、ベッドに至っては天蓋付き。

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