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第34話
彼の体に触れると、催眠術にかけられたみたいにすっと力が抜ける。無条件で信じられる存在が自分を求めてくれることを、心の底から嬉しく、心地よく思った。
「あぁ、リラックスさせてやろう」
途端に俺を抱きかかえて、何故か入口の方に向かう。
「ちょっ、何?」
言ってることとやってることが繋がらなすぎて、ちょっと足をばたつかせた。
「まぁいいから。今日は少し違う場所でしよう」
穏やかな調子で言いながらたどり着いたのは、入口のところのソファー。
「えっ」
どっかりと腰掛ける。彼の膝の上に乗せられている状態で。
「狭いソファーでしたことないからな」
息が唇に当たりそうな距離感で、ことさら低い声で囁いてくる。腹の底がくすぐられるみたいにゾクゾクした。
「こんなところですんの?」
じっと彼の目を見つめる。
ソファーは2人がけで、割と硬めの感触。
誰か入ってきたらどうするんだろう。しかも彼が換気するとか言ったせいでうっすら部屋の入り口のドアは開いている。
先を見越したように、彼は微笑んだ。
「声を我慢してくれれば聞こえない。誰もノック無しには入ってこないだろうからな」
俺たちに用事のある奴もいないだろう。言いながらニヤニヤ笑っている。
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