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第35話
そりゃあ今日の予定はチェックインだけだし、式は明日だし、用事があるとしたら多分夕食の時間の連絡くらいだと思うけど……。
なんて冷静に考えている場合ではなかった。
「バカじゃねぇの、わざわざこんなところでしなくてもいいだろっつうの。本当にリラックスさせる気あんのかよ」
誰かに見られたらどうする。そればかり気になって仕方がない。
彼はへらへら笑いながら、俺のワイシャツのボタンを外していく。
「もちろんリラックスさせるつもりさ。リラックスは少しの緊張感があってこそだからな」
「マジで意味わかんねぇし」
あっというまにボタンを外され、ネクタイも解かれる。首にかけているばかりの状態で、胸元をあらわにされた。
「なんだかスーツを着たままこういうことをするのは刺激的だな。スーツを着ているお前は仕事場でしか見たことがないから」
私服でスーツを着ることなんてないしな。
「さすがで社長室でお前を抱く気にはなれないし」
「そこはきちっとしてるもんな」
いろんな角度から欲求を発散させようとしてくる彼だけど、いわゆるオフィスでの情事というか、そういうのには興味がないんだそうな。
「あくまで仕事場だからな。色恋は外でやればいい」
「そういうところは節操あって尊敬するわ」
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