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第56話

翌日。シェフの結婚式は城のメイン会場といおうかホテルに併設されたといおうか、同じ建物の中にあるチャペルで行われた。 この城のシンボルのように、真正面にドンと聳え立っている塔のようなものがあったんだけど、それがチャペルだったそうで、高さは200メートルほどあるのだという。もともとは城建設当時の王様の謁見場所でどうたらこうたらっていう昔話を、前座の副首相が式の前に説明してくれた。 とてつもなく広いチャペルだった。ざっと200人近い招待客が、バージンロードを挟んで並べられた長椅子にずらりと並んでいる。俺と彼はちょうど真ん中あたりのバージンロード沿いにいたんだけど、周りにいたのが有名俳優とか映画監督とかでどうしようもなく緊張した。 塔は中から見上げると、そのまま後ろにひっくり返ってしまうんじゃないかと思うくらい高くて、ぽかんと口を開けて見上げてしまう。じっと見つめるだけで頭に血が上りそうだった。 「ハニー、なんだか子供みたいで可愛らしいな」 そんな俺の背中をさりげなく支えながら彼が笑う。 「こんなでかいチャペル見たことないし」 そもそも最後に結婚式とか呼ばれたのいつだったっけ?確か墨を入れる前のことだったような気がする。かつての同僚の結婚式だったような。

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