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第58話
大きな鐘の音がして、背後の扉が開いた音がする。
びっくりして振り返ると、かつて随分世話になったシェフの顔があった。隣に、同じくらいの身長の男が並んでいる。こっちはニュースでよく見る顔だった。2人ともお揃いの白いタキシードを着ている。後光が差して、白い服を着ている2人が天使とか神さまみたいに見えた。
一斉に拍手が巻き起こる。
「おお……すげぇ」
思わずうっすら口を開けて呟く。静かなチャペルで急に起こった変化に、ちょっと頭がついていかなかったけど、腕を組んでゆっくりとバージンロードを歩くシェフの顔は嬉しそうなのに今にも泣きそうだった。
「感極まっているな。あいつもここまでくるのにいろいろあったんだろう」
彼が俺の耳に唇を寄せて言った。
日本より海外の方が同性での恋愛や結婚に対して緩そうな感じがしているけど、それでもいろいろあるんだろうし、まして相手は一国の首相だろうし、もっといろいろあったんだろう。
「うん……。シェフ、よかったな」
俺たちは恋愛期間をすっ飛ばしてすぐに婚約、結婚みたいな流れだったけど、シェフが経験してきたであろういろいろについては、自分が同性とのそういうことでの弊害をいろいろと痛感したからなんとなく理解できる。
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