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第62話

俺たちがいる場所と反対側に参列していて、俺たちがいる場所より少し下の方にいた。距離にして20メートルほど。 周りに合わせて拍手をしているけど、視線はしっかり俺たちの方を見ている。俺たちというより、俺のことを見ている。 (え、なんで見られてんの俺) なんかしたっけ? 彼とこそこそ話しをしていたのが気になったとか? それらしい心当たりもないのに、王子様は俺のことをただまっすぐに見続けていた。 だんだん肝が冷えてきた。 あまりにもまっすぐ、目をそらさずに、じっと俺のことを見てくるから。 「ハニー、すごいベールだな」 彼は無邪気に、シェフのウエディングドレスの長いベールに見とれている。 10メートルくらいありそうなベールは、穏やかな日の光に触れてキラキラっと輝いていて本当に綺麗だったけど、それどころじゃない。 俺は目をそらすこともできなくて、ただじっとその視線に耐えていた。 目と目の間にまっすぐに棒でも刺さっているかのように、全くそらすことができない。王子様の整った顔立ち、特に絵に描いたようなアーモンド型の綺麗な目が、かえって強い威圧感を与えてくる。 (なんなんだよ) 怖くなって、つい、拍手をしている彼の手を掴んでしまった。

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