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第65話

とはいえ超一流シェフの超一流の料理はパーティーの目玉で、あっという間にたくさんの人の胃の中に消えていく。 俺もちゃっかりいただいて、あの時の料理の味を思い出し、同時にあの時のことをいろいろと思い出して顔が熱くなった。 そんなパーティーでほとんど一緒にいた俺と彼だったけど、たまに別れて知り合いと話しをしたりもした。彼はそれこそ仕事のつながりで顔が広いけど、俺なんかはせいぜいお呼ばれした日本の政府関係者くらいで、適当に酒を飲みながら「日本じゃこんな豪華な式はありえない」とか「日本にいつ帰るんだ」とか土産はどうするとか、本当に当たり障りない日本人らしい話に終始した。身内で固まっちゃうのが日本人のダメなところだよな。 彼に後から「ハニーを紹介しようとしたのに、政府の人間と話しをしていたから呼び出せなかった」とか言われる始末で。 パーティーが終わった頃にはもう真夜中で、日付も変わろうとしていたのだった。 「うー、さすがに疲れたっ」 部屋に戻ると魔法が解けたみたいに脱力した。 広い方のソファに体を預け横たわり、そのまま声にもならないような声で唸ってしまう。 「ああ、俺も疲れた。とはいえ心地いい疲れだ」 彼も隣に座る。それとなく膝枕を借りた。

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