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第66話
仕事柄知らない奴に囲まれて仕事をすることには慣れているけど、仕事と勝手が違うから変な気疲れをした感じ。
「今日はゆっくり寝れそう」
ヤラしい意味じゃなくて、言葉の通りにぐっすりと眠れそうだった。あそこの国の大統領、こっちの国の貴族、いろんな国の伝統衣装が見られて仮装パーティーかハロウィンみたいだと思った。
「普通にスーツ着てた俺ら、ちょっと浮いてたよな」
「まぁ仕方ないだろう。お前は着物でもよかったかもしれないが、俺の国には伝統的な衣装なんてないからな」
一緒に浴衣を着るわけにもいかないだろうと、言いながら笑う。こんな場所で浴衣なんか着たら笑いもんだ。
伸びしたついでにうんと手を伸ばすと、その手を捕まえて彼が優しく唇を寄せる。
「そういえばハニー、言うのが遅くなったが」
改まって彼が何かを言おうとしたので、俺はふと彼の顔を見上げた。視線が合う。目を細めて微笑んでいた。
「昔馴染みと会ってな、2人で話しがしたいと言われたんだ。明日改めて時間を取ることを約束した」
「……はぁ」
今まで言われたことのない言葉に対する違和感が即座に胸の中に靄を生んで、それしか答えることができなかった。
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