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第67話

だからどうしたいのか、言われる前に靄の中から言葉を拾い察する。 「それほど長い時間話し込むわけじゃないが、少しの間別行動にしたいんだ。いいか?」 靄から雷が落ちたみたいに、彼からの言葉が心臓に刺さった。 別に離れ離れになるわけじゃないのに、なんだか拒絶されたみたいなショックを感じる。 「あ……うん、別にいいけど」 他に言える言葉もなくて、あからさまに元気のない声で返す。彼はすぐに俺の顔を見て露骨に顔をこわばらせた。 「ハニー、そんなに悲しそうな顔をしないでくれ、別行動できなくなっちまう」 別に顔に出したつもりじゃないんだけどな。靄から雨が降って、その雨粒で体が冷えたみたいに唇が震える。 「別に、そういうつもりじゃない」 完全に強がりだった。正直に言おう、かなりショックを受けてるって。 俺が嫌がっても絶対に離れようとしなかった彼から、知り合いと会うとはいえ別行動にしようなんて言われたことは今まで一度もなかったんだから。 「そういうつもりがないなら、どうして険しい顔をしている?」 俺今どんな顔してるんだろう? 普段ろくに顔の筋肉動かしてないから、今どんな表情してるんだか、想像すらできない。

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