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第70話
「ハニー。俺の愛する妻」
指遊びをするみたいに、指輪を摘んで前後に動かしたりくるりと回したりする。
「取らないで」
指から外れてしまいそうで怖い。軽いキスとともにねだると喉の奥で笑われた。
「取るわけがない。その指から一生外させない」
俺だって、一生外すつもりはない。
たっぷり見つめあってからゆっくりと抱きついた体から彼の香りを感じて安心する。そのまま深く深呼吸した。
「明日だけ、少しだけお前のそばを離れる。すぐに戻るから心配しないでくれ。待っていてほしい」
ゆったりとした口調で、再び話される。もう不安も迷いもない。彼にとって、それだけ大切な昔馴染みってことなんだろう。
「うん。待ってるから。遅くなったら承知しない」
「遅くなったらお仕置きか?」
「そうだなぁ、じゃあ滞在中キスとエッチ抜き」
「ハニー、それは勘弁してくれ、滞在している間に死んでしまうかもしれない」
少しの笑い声が場を和ませて、そのまま一緒に風呂とベッドを共にする。いつもと変わらない優しいスキンシップをはかった。
「その昔馴染みってやつ、どんなやつなの?」
一仕事終えてから、裸のままベッドで甘えて尋ねる。けれど彼はと言葉を濁しただけで、詳しい人となりを語ろうとはしなかった。
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