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第76話

イングリッシュガーデン風とか中世風とかなんかいろいろ書いてある。さすがに日本庭園はないらしいけど、多分女子なんか来たら大喜びしそうな綺麗に整えられた海外の落ち着いた庭が城の裏側に広がっている。街中だとは思えないほど、鬱蒼とした森や林が再現され、川も流れているらしい。 「うへぇ、信じらんねぇ」 と思ったけど、東京だって街の真ん中に城あったわけだしな、と思い直す。 一国の城の庭なんて散歩する機会ないだろう。散歩が趣味ってわけじゃなかったけど、ジムに行けない分歩くくらいしないと。これを機に散歩が好きになるかもしれないし。 城の中という守られた空間で、完全にフリーな観光なんて、日本国内でもやろうたってやれることじゃない。ゲームか映画の主人公にでもなった気分で、ゆっくり散策することにする。 どこだかわからないけど、城の向こう、遠くでお祭りみたいな音が聞こえる。朝からご苦労なこった。あとで彼とゆっくり見に行こう。 誰にもすれ違うことなく、ここに来たときに通った城の玄関口に立った。 観光客がまだ入らない時間みたいで、誰もいない。朝の日差しが眩しくて爽やかで、スッキリと気持ちがいい。それにしても、Tシャツに七分のカーゴパンツなんて、城ににつかわしくない格好で出来てきてしまった。

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