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第77話

軽く伸びをして、パンフレットに再び視線を落とす。ここからすぐ右手に曲がって城の裏手に向かうように歩いて行くと、庭の入り口らしい。石造りの門が立っていて、そこから一気に緑色の世界が広がっている、らしい。そう書いている。 石畳を百メートルほど歩いたところで太い石造りの門が現れたけど、全然間に受けないでパンフレットを見ていたせいか、想像以上に緑色の世界で唖然とした。 そこできっちりと石畳が終わり、途端に形の整えられた低木と刈りそろえられた芝が広がる。靴で足を踏み入れていいのかためらわれるほどの綺麗な緑色の芝に魅せられて、飲み屋に立ち寄るみたいにふらっと庭園の中に入る。 「すっげぇ」 地平線というには大げさだけど、ずっと奥まで続く芝生、池や整然と並んだ背の低い植木。まだ露に濡れてそこかしこで小さい雫がキラキラと輝いていた。柔らかい日の光に照らされて、なんとなく甘い空気が香ってくる。絵に描いたような爽やかで心地よい朝の景色だった。 「わー、最高じゃん、すげぇ眺め」 思わずスマホを取り出す。この国に来てからも何枚か写真をとったけど、正直写真の腕がないからあんまりいい写真は取れていない。せめてなるべくピンボケしないように撮影する。

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