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第80話

孔雀とカワウソ。もといタヌキ。 完全に孔雀のペースに巻き込まれて、朝の爽やかな景色を背景にかなりシュールな空気を醸している。 「東洋の人っていうのは、本当に髪が黒いんだね。あなたもとても綺麗な黒髪だ」 失礼、と言いながら全然失礼に感じていない、無造作な様子で俺の髪に触れてくる。体が跳ねた。 「人の奥さんの髪に触るなんて失礼なんだろうけど、あんまり綺麗なものだから」 俺がやめろというより先に、言葉を制するみたいに言う。けれど、その口調もゆっくり。俺は俺でその空気に飲まれて、まぁ髪の毛くらいなら別にいいか、と思ってしまっていた。 細くて白い指先が、俺のつむじの脇あたりの髪をすくい上げる。そのまま、じっと髪を見つめられた。白髪がないのが唯一の自慢みたいなもんだけど、ここで白髪が見つかったらマジ恥ずかしい。 「うん、いいなぁ。あ、でもあなたの髪はゴワゴワしている」 さらっと吐き出される失礼発言は、どうやら無意識らしい。 「あぁ? すいませんねソレは」 ちょっとイラッとしながら返す。少しくらい不躾でもバチは当たらないような気がしてちょっと強気に出る。案の定、王子様は特に気にした様子もない。

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