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第81話

「こうしてお近づきになれて嬉しいよ」 まったりと微笑む。綺麗な笑い顔は、まっすぐに俺に目を合わせてきた。 「廊下で初めて会った時から、なんだかあなたのことが気になっていたんだ。結婚式の時見かけたあなたも、とても美しいなと思った」 「はいっ?」 なんだか話がおかしな方向に向かい始める。思わず声が裏返ったけど、王子様はハッとした顔をして髪から手を離した。 「そうだ、僕の自己紹介をしていなかったね」 そして唐突に始まる自己紹介。俺はスマホを持ちぽかんとしたままだけど、全然御構い無し。 「僕は、この国と友好関係にある国の王子なんだ。第2王子だよ。あまり大きな国ではないんだけど、欧州にある」 名前は、と切り出したところで、思わず「あぁ」とわかったみたいな声を出してしまった。 「僕の国を知っているの?」 「知ってますよ、そりゃ。普通に有名じゃないですか」 とはいえあんまり知らない国だけど。 「そうなんだ。あまり考えたことはなかったけど。あなたの国とも交流があるよ」 「へー」 当たり障りないくらいの感じで受け答えをするけど、まっすぐじっと見つめられてなんだか怖い。というか緊張する。

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