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第83話
にっこりと微笑む。なるほど、それじゃあ俺の腕を見たって動じるはずがない。二の句が継げないでいると、自然な動作で、スマホを持つ俺の手に触れてくる。
「それに、あなたは全然、悪いことをするように見えない。ちょっと乱暴に振舞っているけど、本当はとても優しい人のように思うけどな」
まるで社交ダンスでもするみたいに、そのまま軽く腕を高く取られる。そっと腰に手まで添えられて。
「そうじゃなきゃ、旦那さんともども、一国の首相の結婚式になんて呼ばれないでしょう?」
間近で穏やかに微笑まれる。不覚にもドキッとしてしまった。いい匂いに全身を包み込まれる。
「ちょっ、と、やめてもらえます?」
あまりにも自然に王子の腕の中に収まってしまったから、ちょっと抵抗が鈍った。
ゆっくりと離れるけど、王子は気にしたようでもなく、人のパーソナルスペースに侵入しっぱなし。
「やめるって何を?」
本当になんのことかわからないみたいな顔をして軽く首を傾げた。しまいに笑いながら人の手をとって、再びその甲に静かに唇を落としてくる。
「ただの挨拶だよ。僕の国ではこれが普通」
ふんわりと笑って。俺のペースが完全に乱れる。
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