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第85話
けれど、王子は顔色1つ変えずに言葉を続けた。
「あんまり結婚してるとかしてないとか、そういうことは気にしない方なんだ」
「はぁ……?」
自分の中で波が引くみたいに心の中が冷たくなるのを感じた。
あ、ダメだ、そういう考えの奴とは仲良くなれる気がしない。
それこそ素行のいい方じゃない昔の俺ならふーんで済んでたかもしれないけど、彼という伴侶を得た今の俺には、そういう考え方は受け入れられないものだった。その矛先が自分に向いているとなれば尚更。
「そういう縛りは愛情にはあまり関係ないと思わない?」
悪びれもせずに言うから、余計に信じられない。
「大いに関係あるね。パートナーを裏切るような真似をわざわざする必要はない」
ちょっとムキになる。眉間にシワが寄るのを感じた。
「パートナーねぇ。あなたの国では、そういう縛りが厳しいの?」
「厳しいか厳しくないかの問題じゃなくて、人としてどうなの? って話だろ」
「人として? 僕は普通の人間だけど?」
面白いくらいに話が噛み合わない。こいつの…もう王子だかなんだか知らないけどこいつでいいや、こいつの国のお国柄なのか、それともこいつ自身の貞操観念が崩壊してんのかよくわからない。
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