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第87話

「少しだけ部屋の扉が開いていたんだ。たまたま通りかかった時にね」 少しずつ話を解かれていく。俺は全然ピンとこなくて、少し距離を保ったままじっと王子の顔を見てしまう。 「ずいぶん甘ったるい声を出すんだね、女の子みたいだった」 ようやくそこでハッとした。同時に、そこまで気づかなかった自分自身に嫌悪感を覚える。 「さすがに男同士でそういうことをしたことはないし、見たこともないからからびっくりしたけど、ちょっと興味も湧いた」 綺麗な微笑みに背筋が寒くなる。 「夫とは体の相性はいいの?」 半歩くらいの距離をゆっくりと近づく。俺は足を掴まれてるみたいに動けなくなる。 「まぁ、よくなかったらあんなに喘いだりしないか」 「っ、やめろ!」 自分に対する嫌悪感は、目の前の王子にそのまま向けられた。こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。少なくとも、彼と出会ってからこんなにムカついたことはない。 真っ直ぐに睨み付けるけど、王子は変わらず涼しい顔をしている。 「僕はとても綺麗だと思ったよ、あなたのこと」 けれど俺とは対照的に、その顔には全く邪気がなかった。なんか本当に綺麗なものを見て感動してる人の顔っていうか、新たな発見したみたいな顔をしている。

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