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第90話
結局、どこも散策しないまままっすぐ部屋に帰って来てしまった。
しかも興奮に任せて歩いて来たもんだから結局道に迷って、行きの3倍くらいの時間かかって部屋に帰って来た。
部屋についた時には彼はまだ帰って来てなくて、それにもイライラしたりして、昼過ぎに上機嫌で帰ってきた彼をふくれっ面で出迎えた。
「どうしたんだハニー? 何かあったのか?」
「別にない」
ピシャッと言い切ると、彼は困ったように笑う。
「ハニーは何かあると言葉が短くなる。いつも言葉数が少ないのに、余計に短くなるからすぐにわかるぞ」
広いソファに腰掛けて何も答えないでいると、隣に腰掛けてゆっくりと抱きしめてくれる。
「ハニー会いたかった、会いたくて胸が張り裂けそうだった」
たった数時間離れただけなのに、数ヶ月離れたみたいな切なそうな言い方をする。俺は少しの間何も反応しなかったけど、我慢できなくてすぐに抱き返した。
「もっと早く帰ってこいよ」
バカ、と小さい声で呟くと、顔中にキスを落とされる。
「すまなかった、話がなかなか終わらなくてな。寂しい思いをさせてしまってすまない」
本当に寂しそうに言うから、共鳴してちょっと心が落ち着いた。
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