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第91話
「だがすまないハニー、明日も少しの時間出なければならなくなった。今日ほどではないと思うが」
続けて、本当に申し訳なさそうに言うもんだから、責める気も起こらなかった。さっきまでのささくれた気持ちが嘘みたい。本当に、彼と一緒に居ると、不思議なくらいに気持ちが落ち着く。
「……ん、わかった。早く帰って来てくれるならいい」
良い子でいる、なんて子供みたいだけど、額を彼の肩に擦り付けながらちょっと甘えてねだってみた。
「もちろんさ、待っていてくれ。愛する俺のハニー」
すっかり鼻の下を伸ばした彼が、俺の体の全部を包み込むように強く抱きしめてくれる。
「さあ、午後は約束通り、外に祭りを見に行こう」
「ああ」
「美味しいものを食べよう、この国の料理は美味いと実は評判なんだ」
「へぇ、知らなかったな」
「ハニーはあまり食に拘りがないからな、人生損していることと同じだ。美味いものを食わせてやらないとな」
「餌付けかよ」
彼の腕の中でまったりとした会話が続く。
やろうと決めたらやりだす彼は、俺を抱き上げてそっと床に足を下ろさせたあと、昼飯を食べに行こうと目をキラキラさせていた。まったく、これじゃどっちが子供なんだかわかんないや。
俺の癇癪は、たった数分で落ち着いてしまっていた。
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