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第92話
「ところでハニーは散歩に行くと言ってたが、どうだったんだ?」
手をつないで街に繰り出し、街角のカフェで昼食を取る合間、彼がふと尋ねてきた。
「えっ?」
「散歩さ、城の庭はずいぶん豪奢だそうじゃないか、俺も後で見たいと思っていた。どうだったんだ?」
コーヒーカップを指に引っ掛けて微笑む彼の向かいで、俺は野菜とベーコンたっぷりのベーグルを頬張っている。
一瞬間が開いて、何度か軽く頷く。あんまり無邪気に尋ねてくるから、一番に言いたかった変な奴に会ったことを言いそびれた。
「あ、うん、すごかったよ、広い芝生と森だった。街中じゃないみたいな」
「ほう、それは素晴らしいな。城から一歩出ればこんなに街なのに。異世界のようだ」
「なー。信じらんねぇよ。あの庭は観る価値ある」
その城から一歩出ればっていう街中も、赤茶けた石畳に同じ色の石造りの建物が並んでいて、森の中の開けた中世の都市って感じ。雰囲気が最高にいい。
「ハニーがそこまで言うのなら、ぜひ見に行こう。ハニーに案内してもらうぞ」
コーヒーを飲み干した彼の横顔を見ながら、ベーグルをごくっと飲み込む。言うタイミングとしてはここかな。
「でも俺、あんまり見てこなかった」
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