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第93話

「Oh… なぜだ? あんなに楽しみにしていたのに」 そんなに楽しみにしていた覚えはないけど、たしかに壮大な庭を大して見てこなかったっていうのはおかしいよな。 おかしいのには理由があるんだよ。 「いや、変なのに絡まれて」 またベーグルを頬張ると、彼が明らかに険しい顔をする。 「変なの? 絡まれた?」 「うん。なんかいきなり話しかけてきて、俺に興味あるとかなんとか言ってきて」 「それは聞き捨てならないな」 彼の顔がどんどん険しくなる。 「あ、でも何かされたわけじゃないから、うん」 ここで手だけどキスされたなんて言ったら、彼の怒りのボルテージがとんでもないことになるかもしれないから、あえて言わなかった。 「とはいえ、城の中にいたんなら、結婚式に参加していた誰かの可能性が高いということだな。誰かわかるか?」 険しい顔のまま尋ねられるから、ちょっと戸惑う。 「あ、うーん、それはちょっとわかんない」 アイツを守りたいわけじゃないけど、言葉を濁した。ここで芽を摘んでおけば事も大きくならないだろう。相手がわかってトラブルになってもよくないし。 「まぁ、たくさんの人間が参加していたからな」 当たる先がないとわかると、彼もすこし落ち着いたようだ。

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