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第95話

「?」 明らかに俺の方を見てる。向こうはサングラスしてるのに、不思議と視線がこっちを向いているのを感じる。 つばの広い帽子とラフなTシャツがアンバランスで、正直センス悪い。 「なに、誰?」 呟くみたいな絞り出すみたいな声が出た。つられた彼が振り返る。 「どうしたハニー?」 彼にはわからなかったらしい。けれど、向こうは手を振り続けている。 そこで彼がやっと気がついた。 「知り合いか?」 怪訝そうに尋ねてくる。 「いや、全然。お前の知り合いじゃねえの?」 「さぁ、知らないな」 2人して頭の上にでっかいハテナマークがついてる。手を振るセンスの悪いのは、モデルみたいに長い足をからませるみたいにして歩いてくる。 見覚えのある歩き方だ。 「……ん?」 第六感とでもいうのだろうか、それを見ているとなんか背筋が寒い。 「偶然ですね」 第六感は当たる。思ったけど、第六感じゃなくて虫の知らせか。とにかく当たる。 「こんなところでお会いするとは思いませんでした」 たった数歩歩いてこられたところで、誰なのかをすぐに察したんだから。 「あぁ、これはこれは、王子!」 気づいた彼は、少し恐縮した様子で慌てて背筋を伸ばした。

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