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第97話
「なんだか大きくて派手な箱を担いだり、煌びやかな衣装を着たり、なかなか素晴らしいんです」
「へぇ」
王子様が俺を見た。大人しく、目の前だけどなるべく気配を消して話を振られないようにしていたというのに。
しまいに彼の無邪気な一言。
「王子様もいつか日本にいらしてはいかがですか? ご案内しますよ」
今の俺には禁断の一言に等しい。
「案内するって、お前が案内するわけじゃないじゃん」
思わず口早に言うと、王子は初対面のときみたいに、まっすぐに俺を見てきた。
「ああ。そうですね、奥様の方がもしかしてお詳しいのかな?」
うんと目を細める。多分、大体の人が優しい微笑みと言うのだろうけど、俺には本当に邪悪な微笑みにしか見えない。
「そうですね、妻は純粋な日本人なので。私より詳しいです」
俺のことを語る彼はとても誇らしげで、見えないだけで鼻が高くなっているのがよくわかる。そうしているのは本当に可愛らしいと思うけど、今この瞬間は足枷ですらある。
「いや、でも俺あんまり外でないし……」
「でも、外国人の旦那さんよりはご存知ですよね?」
声を遮って王子が言う。
「ま、ぁ、そうですけど」
この瞬間に、他の言葉をいうのも躊躇われた。
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