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第100話
「えっ、旦那って」
当たり前だけど、例の首相だ。
「え、首相紹介されるの? 俺が?」
「首相というか、あいつの夫さ。何も緊張することはないぞ」
「いや緊張するだろ普通」
まぁもともと彼の友人でもあるわけだから、彼は何も緊張しないんだろうけど。俺みたいなのが会って大丈夫なのかちょっと不安ではある。
「俺もやっと愛するハニーを彼に紹介することができる。本当だったらもっと早く紹介したかったんだが、そうもいかなかったからな」
けれど、無邪気に目を細めながら言うのを見ると、少し気持ちが落ち着いた。そうか、彼にとっては首相である前に友人な訳だからな。
隣に腰掛けてきた彼がスマホの画面を見せてくる。海外の顔文字が散りばめられた、可愛らしいメール文面だった。
「短い時間で申し訳ないけど、ぜひあなたと愛するハニーちゃんに夫を紹介したいわ、か。ハニーちゃんて」
「メールでやりとりする時、俺がお前のことをハニーちゃんと書いているからな」
「今度からハニーはいいけどちゃんづけは恥ずかしいからやめてくれ」
ただの友人同士の付き合い。そう思えば萎縮することもない。王子様とやらがあんなんなんだから、一国の首相と友人として会うなんて、どうってことないだろう。
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