100 / 180

第100話

「えっ、旦那って」 当たり前だけど、例の首相だ。 「え、首相紹介されるの? 俺が?」 「首相というか、あいつの夫さ。何も緊張することはないぞ」 「いや緊張するだろ普通」 まぁもともと彼の友人でもあるわけだから、彼は何も緊張しないんだろうけど。俺みたいなのが会って大丈夫なのかちょっと不安ではある。 「俺もやっと愛するハニーを彼に紹介することができる。本当だったらもっと早く紹介したかったんだが、そうもいかなかったからな」 けれど、無邪気に目を細めながら言うのを見ると、少し気持ちが落ち着いた。そうか、彼にとっては首相である前に友人な訳だからな。 隣に腰掛けてきた彼がスマホの画面を見せてくる。海外の顔文字が散りばめられた、可愛らしいメール文面だった。 「短い時間で申し訳ないけど、ぜひあなたと愛するハニーちゃんに夫を紹介したいわ、か。ハニーちゃんて」 「メールでやりとりする時、俺がお前のことをハニーちゃんと書いているからな」 「今度からハニーはいいけどちゃんづけは恥ずかしいからやめてくれ」 ただの友人同士の付き合い。そう思えば萎縮することもない。王子様とやらがあんなんなんだから、一国の首相と友人として会うなんて、どうってことないだろう。

ともだちにシェアしよう!