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第102話

(うわ、マジでテレビで見たまんまの首相だ) やっぱり初見はうろたえる。ニュースでしか見たことない顔が目の前にあるんだから。 けれど、彼がすぐに笑顔で首相とシェフに握手を求めた。 「久しぶりだな、結婚おめでとう!」 「ああ、ありがとう! こちらこそ、君が結婚したというのにお祝いが後手になってしまってすまなかった」 「そんなことはないさ、こうして招いてもらって嬉しいよ。うちの妻を紹介することができるしな」 俺を置いてきぼりに旦那同士の世間話は続く。すると、シェフが俺の顔を見て微笑んでいた。 「来てくれてありがとう! また会えて嬉しいわ、元気そうで何よりね」 別荘で見たときと変わりない笑顔で、一気に気持ちがほぐれる。 「ああ、うん、ありがとう。おめでとうシェフ」 つられて笑っちゃう。俺たち夫婦はそのまま向かい合わせで席に着いた。 「お礼が遅くなってしまって申し訳ない。今回は、私たちの結婚式に来てくださいまして本当にありがとうございます」 座って背筋を正すと、斜め向かいの首相が、テーブルに肘をついて話し始める。何か交渉ごとみたいだなと思った。 「改めて自己紹介させてください、そして、私の妻も」 首相は自身の名前と肩書き、そしてシェフを笑顔で紹介してくれた。

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