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第106話
笑いながら言う。素行いい方じゃないのはお互い様だなと思ってたけど、改めて昔の知り合いに言われると余計に信憑性増すしいい気分がしない。
けれど、途端に彼が慌てて「よせよ!」と声をあげた。
「俺はハニーに出会ってから変わったんだ。たしかに昔は奔放だったが、俺はハニーと出会って、愛する人と向き合うことの大切さと本当の楽しさを知ったんだ。嘘じゃないぜ」
慌てぶりがちょっと可愛いかった。大柄な体が手を振ったり目をまん丸くしたり早口になったり、心のモヤモヤの一方、隣で見ていて面白い。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ、わかってるわ。アタシはあなたの別荘で、あなたたちのこと見てたんだから」
シェフは口元を手で隠しながら上品に笑っていた。
「アタシも昔から彼のことを知っているし、過去に付き合っていた人のことだって何人か知っていたわ。けれど全然違ったの、この大きい体が、ひとりの日本人に面白いくらい翻弄されてた。一挙手一投足、全部を気にしてるように見えた。本当にこの人のことが好きなのね、って思ったわ」
「ええ……?」
思わず声を漏らした。俺は彼の過去のことなんか全然知らないし、別荘では随分もてなしてもらったなとは思ってたけど、友達のシェフが言うんだから相当なことだったんだろう。
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