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第107話

「ハニーちゃんもだんだんダーリンのことを好きになってきてるっていうのもわかってたしね」 シェフが微笑んだところで食事が運ばれて来る。一皿一皿出てくるスタイルにももう慣れたものだった。 「あなたがストレートだってことは別荘に来る前から聞いてたの、だから友人として彼をそばで見ていて、こんなに熱を上げて大丈夫なのかしら、振られたら相当傷つくんじゃないかしらって心配だったのよ」 優しい瞳は、心の底から懐かしんでいるみたいに見えた。旦那2人は食事をとり始めるけど、俺はその瞳に見入ってしまった。 「けれど、こうしてうまくいってホッとしたわ。アタシたちも2人の幸せにあやかることができたしね」 殊更可愛く微笑まれる。シェフがフォークとナイフに手を伸ばしたのと同じタイミングで、俺も手に取った。 「ハニーうまいぞ、最高だ」 うまいのはもちろんなんだけど、彼のものすごい笑顔が余計に美味しく感じさせてくれる。 結局昔のことを聞いてモヤモヤしたところで、彼の笑顔を見たら気持ちが緩んじゃうのっていうのが、俺も彼に惚れてるっていう何よりの証拠なんだろうな。 「……俺がこいつのどこが好きかっていうのを説明するのは難しいけど」 だから、ちょっと話したい気持ちになった。

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