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第109話
改めてそんなことを言われるとなんだかちょっと体がむずむずしてくる感じがしたけれど、結局言葉にしてしまうとそういうことなんだよな。
「ええ、はい、まぁ、そういうことですね」
我ながら歯切れ悪く言うと、俺の隣のスキンヘッドは、目を真っ赤にして小刻みに震えていた。
「はっ、ハニー……」
アレ、こいつ泣きそう。思った瞬間にボロッと涙をこぼす。
「はあ? なんで泣くんだよ意味わかんねぇ」
「これが泣かずにいられると思うか? こんなに愛されているなんて、俺はなんて幸せなんだ……」
言いながら肩まで震わせてしゃくりあげる始末で。
「ホントお前マジいい加減にしろって、泣くことねぇし迷惑だろ!」
俺が泣かせたみたいじゃねぇか。オロオロする俺を尻目に、向かいの夫婦は温かい眼差しで俺たちを見ている。
「うんうん、素晴らしいことじゃないか。2人はお互いを思い合っているカップルだということがよくわかったよ」
「そうね。本当に良かった。あのとき別荘で2人の想い合う過程を見ることができて光栄だったわ」
こんな夫婦になりたいわね、と微笑むシェフの様子は本当に幸せそうで素敵なカップルだなと思ったけど、それより何より今は、ガチ号泣しているこのスキンヘッドを無理矢理泣き止ませることが最優先だった。
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