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第110話
結局泣き止むまで時間かかったし、泣き止んだと思ったら俺がなんか喋れば泣き出すし、本当にどうしようもなかった。
「それだけあなたのことを愛しているってことよ」
シェフはのほほんと言うし、首相も同調するしで、もう放っておいた。結果的にデザートを食べ終えてもその調子だったんだけど。
「お前本当病気なんじゃねぇの?」
部屋に向かう途中、あまりにも泣きすぎるから呆れて言ってしまった。半分肩を貸すように寄り添いながら歩く。
「あぁ、俺は病気さ、愛の病だ」
「言ってろバカ」
この分なら大丈夫そうだ。食事を始めて2時間あまり。食べ終えてやっと席を立った。ランタンみたいな街の灯りは少し減っていたけれど、その分星の明かりがとんでもなく綺麗だった。
「ほら、外見てみろよ、酔い冷めるぞ」
適当に言いながら外を見るように促す。少し気分転換させれば落ち着くだろう。彼は俺の指先を視線で辿りながら、そのまま足を止めて外を眺めた。
「……あぁ、美しい」
ぽつ、と呟いた声が少しかすれていて、本当に心底綺麗だって思ってるのが伝わってきた。
「だよな、この街すげぇ綺麗だよな」
観音開きの窓は空いている。風こそなかったものの、夜独特の空気の匂いがまっすぐ肺にしみてくる。
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