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第111話

少し高めの窓のヘリに無理やり腕を置いて、外を眺める。 本当にふわっと吹いた風に、前髪を少し持ってかれた。手櫛でゆっくり整える。あまりにも自然な動作で、脇から腕が差し込まれた。 「この街も美しいが、今はお前の方が美しい」 「ちょっ」 彼の腕に力が入る。体勢を低くした彼が、俺の膝裏を腕で掬い上げていく。 「ハニー、ちょっとだけ我慢してくれ」 「えっ」 えって言ってるうちに体が浮いた。 「ちょっと!おい!」 あんまりにも軽々と持ち上げられて、頭がついていかない。この体勢になると、こうなるともうどうしようもない。彼に火がついた証拠だった。 間近にある顔が鼻息荒くてちょっと可愛い。腹が決まるというか慣れているというか、そんな風に思う余裕すらあった。 「もー、しょうがねぇなぁ本当に」 わざと露骨に呆れた風を装って囁くと、今日は開き直られた。 「お前が美しいせいさ、仕方ないだろう?」 「えー、そんなことねぇって」 「ハニーもいつも俺に襲われているわりに慣れないな、いつまでも反応がウブだ」 「ウブなわけねぇじゃん」 「いいや、少年のように初々しい」 遠回しに童貞っぽいって言われてるみたいでなんか腑に落ちないけど、まぁいいか。

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