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第119話

ようやく気づいてもらえた。傷つけられた心が徐々に温かくなってくる。 察してもらおうなんて思ってはいなかったけど、彼が気づいてくれたことがくすぐったく、とても嬉しい。 「別に気づいてもらおうと思ってたんじゃねぇし」 結果的に強がったようなことを言ってしまう。 彼はそんな俺を抱きしめたまま、よかったら、と付け加えた。 「よかったら、詳しく聞かせてくれないか。いつかのように、深い心の傷になっているのなら何も聞かない」 彼の気遣いが、ささくれた心にしみてくる。話したいけれど、正直、言って彼が逆上したらどうしようという懸念もある。 「うーん、と」 いや、彼の性格上、逆上なんてことは絶対にしないだろうけど、けれど良い気分はしないはず。滞在中、結婚に関する儀式は一式終わって入るけれど、まだあの王子と顔を合わせる機会はあるかもしれないし、やっぱり関係を悪くしたくはない、し。 (なんで俺こんなに気揉んでるんだろう) 言ったら被害者なのに。悶々とした結果黙ってしまうと、彼は少し慌てて俺の顔を覗き込んで来た。 「無理に聞こうというんじゃないんだ。ただ、お前の夫として、パートナーとして、痛みを共有できたらと思ったんだ」

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